蚕で探究 その①

周桑物語

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25年ほど前、巷では「クワガタムシ」がブームとなりました。

海外のオオクワガタが取引されたり、国産オオクワガタの大型個体が驚くような金額で取引されたり、そしてそれを追うように「ムシキング」というトレーディングカードゲームが大流行したりと、クワガタムシの商業化が社会現象にまで発展しました。

一方、その頃の愛媛でも「オオクワガタを大きくする技術を開発したら一攫千金も夢じゃない!」と真剣に考える高校生たちがいました。

今回は、この高校生たちがどのようにしてこの夢を叶えていったのかを紹介していきます。

まずは研究テーマの設定をめぐるあれこれです。

これを研究した高校生メンバーたちは、オオクワガタの幼虫の体を大きくする物質を探すことにしました。

検索方法は、それらの物質を幼虫の餌に混ぜて体が大きくなるかどうかを実験して確かめるというものです。

その実験方法を話し合っていると、彼らに思いもよらない壁が立ちはだかりました。それは「オオクワガタの幼虫の時期が2年間もある」というものです。

メンバーはみんな3年生だったので卒業までに、ある程度の結論を導き出したいという気持ちが強く、違う種類の昆虫の幼虫で実験するという妥協案に至りました。

そして代替昆虫の検索を進めました。検索条件は①飼育が容易にできる昆虫であること。②幼虫の時期が半年以内でかつ孵化から羽化までが1年以内であること。

その条件にヒットした代替昆虫が、「蚕」だったのです。

この時から、この高校生たちが蚕に向かい合う研究の日々が始まるのでした。

【蚕で探究 その②に続く】

この物語はノンフィクションです。

4令幼虫になり始めました

周桑物語

4令と3令の比較【改定】

4令幼虫が増えてきました。孵化した日時に差があったので、まだまだ小さな幼虫も混在しています。

4令幼虫と3令幼虫の差を確認できる写真が撮れたので載せました。

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3令では見られない、目と眉毛のような模様も4令でははっきりしています。

“目と眉毛のような”と言うのも、目でも眉毛でないからですが、これは眼状紋とよばれており、蚕が自分を大きく見せて外敵を威嚇するための模様ではないかと考えられます。このようなことを擬態と言います。

なぜ4令から擬態が始まるのでしょうか。不思議です。

鼻のように見える部分も3令では小さく黒っぽかったのですが、大きく膨らみ白っぽくなってきました。これも4令の特徴です。これも鼻ではなく、頭部なのです。ここには目も口もあります。しかし鼻はありません。

では蚕の幼虫の鼻はどこに付いているのでしょうか?そしてどこで息をしているのでしょうか?

答えは、鼻は存在せず「気門」とい幼虫の横側にある黒くて丸い模様の部分に開いた穴から空気を取り入れて呼吸をしているのです。

私たちとは色々違いますね。

蚕と桑の不思議な関係③

周桑物語



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自然界でも蚕のほかに桑の葉を好んで食べる虫を見たことがありません。

「エリサン」とか「ヨトウガ」という蛾の仲間は、多くの種類の葉を食べることのできる幼虫として知られていますが、それらに桑の葉をやっても噛むまではいきますが、食べ進むことはありません。

それには驚きの事実があったのです。

桑の葉を枝からもぎ取ると乳液が滲み出てきます。その乳液を調べてみると、アルカロイドという物質が検出されます。

このアルカロイドは、桑の葉に豊富なショ糖をブドウ糖と果糖に分解する分解酵素を働かなくする作用があります。

それならと桑の葉に含まれるブドウ糖を原料にトレハロースを合成して血糖として各細胞に届けて、そのトレハロースを細胞内で分解してエネルギー生産活動を行うためのブドウ糖を得ようと試みますが、その際のトレハロース分解酵素さえも働かなくさせる作用があります。

そのことで、ショ糖由来のブドウ糖の供給が低下しかつ、さらにはトレハロース由来のブドウ糖も生成できないため、唯一のエネルギー源であるブドウ糖の供給が途絶えることになるのです。

このことから、アルカロイドは昆虫にとって猛毒であるといえます。では、なぜこのような毒性を持つ桑の葉を食べる蚕は平気なのでしょうか。

その答えは、蚕だけがアルカロイドの毒性作用に耐えうる分解酵素を持っているからなのです。

蚕が進化の途中で獲得した能力なのでしょう。そのことで桑の葉を独占することができているのです。

キアゲハはパセリ、アゲハは柑橘類の葉そして蚕は桑の葉というように、この食糧寡占状態は昆虫界の食糧競合を抑えて、互いにセーフティーネットを作り出しているようにも感じられます。

昆虫が進化で獲得した相互関係を考察することで、私たち人間のより良い社会システムも思いつくかもしれません。

3令幼虫になり始めました

周桑物語

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3令幼虫が多くなってきました。生まれて2週間となりました。

孵化した日時に差があったので、まだまだ小さな幼虫も混在しています。

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大きいものは体長20 mmにもなっています。

桑の葉を食べるスピードと量も上がってきています。

現在、蚕たちは職員室で飼育していますのでいつでも見学してください。

蚕と桑の不思議な関係②

周桑物語

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ショ糖はブドウ糖と果糖が結合しているので二糖といい、ブドウ糖と果糖は単糖と言います。

生物はブドウ糖を使って細胞内のミトコンドリアで酸素呼吸による生命エネルギー生産を行います。

昆虫も例外でなく、ブドウ糖がなければ生命を維持することはできません。

そのブドウ糖を桑の葉から得ていることも先の実験結果で理解できました。

単糖のブドウ糖としても桑の葉に存在していましたが、二糖であるショ糖の方が量的に多量に存在していたのでブドウ糖と果糖に分解してから酸素呼吸に利用していると考えるのが合理的です。

それならば、蚕の体内に摂取されたショ糖は、体内の分解酵素によってブドウ糖と果糖とに分解されているはずです。

また、私たちや昆虫たちも摂取したブドウ糖を腸管で吸収して各細胞まで血液が運びます。

血液中に含まれる糖を血糖といいます。

私たち人間の血糖はブドウ糖ですが、昆虫である蚕の血糖はトレハロースというブドウ糖が2分子結合した二糖なのです。

なぜ昆虫の多くは血糖としてすぐに使えるブドウ糖を選択せずにトレハロースを選択したのだろうか?とても不思議です。