周桑物語

この週末は蚕がいっきに繭(まゆ)を作りはじめました。
黄色い繭です。
蛹(さなぎ)になる時に繭を作ります。
手も足も出ない蛹の時期に自らの身を守るためにつくるシェルターです。
紫外線、湿度、乾燥、微生物、外敵などから身を守るために有効な素材でできているのでしょう。この機能的な住空間を作り出す繭は、私たちの身も守ってくれる素材でできているのかもしれません。
昨年、そのようなことに気付いた電気システム科の3年生が繭の成分であるセリシンが紫外線をどのくらい防げるのかを調べる測定機器を手作りしてくれました。紫外線センサーと液晶モニタとマイコンをつなげて完成させました。
実験はうまくいかなかったので、後輩の皆さんに実験を成功させてほしいと願いながら卒業しました。受け継がれることを願っています。
そんなことを思い出しながら蚕の繭づくりを眺めています。

周桑物語

30日ほどしかない蚕の幼虫の時期を3日間短縮する事実の使い道を考えることになった生徒たちは、それから間もなく、偶然にも活用方法に巡り合うことになりました。
ある時、先生が新聞記事を持ってきてくれていました。
その記事には「バイオ新産業 カイコが働く」という見出とともに、蚕を工場のように使用して、動物用のインターフェロンという薬を製造しているという内容の記事が掲載されたものでした。
東レ株式会社愛媛工場に就職された先輩が配属されている動物薬室での業務内容を特集したものでした。
バキュロウィルスというインターフェロンを生産する遺伝子を持たせたウィルスを蚕に感染させることで、蚕の体内でインターフェロンを生産し、動物の薬剤を製造しているということでした。
ただ、バキュロウィルスを感染させた蚕は、生育が遅くなり、死亡率が上がるという課題があるとのことでした。
その時に高校生たちは「バキュロウィルス感染蚕の餌に0.5%コロイド状キトサンを添加した人工飼料にして生育させれば、生育を促進するだけでなく、死亡率も低下させることができるではないか」ということに気付いたのでした。
もしこの事例に応用できれば、インターフェロンのような高価な薬剤の量産を可能にすることで価格を抑え、病に苦しむ動物たちの痛みを癒し、命を守ることに自分たちの実験結果が少しでも役に立つ可能性があることを悟った高校生たちは、さらにこの研究を多くの人々に知ってもらいたいという気持ちが強くなっていったのです。
「オオクワガタを大きくできれば一攫千金も夢ではない!」という高校生たちの当時の思いは、「カイコで産業に貢献する」という思いへと成長したのでした。
【蚕で探究 その⑨に続く】
※この物語はノンフィクションです。
周桑物語

多くの蚕たちが5令を迎え、繭を作る準備のラストスパートの時期となり、もりもりと桑の葉を食べています。耳をすませば「パリパリ」と音が聞こえるほどです。
本来ならこの時期は頻繁に桑畑に葉を採りに行かなければなりませんが、本校には桑畑がありません。そして学校の周辺には桑の木が1本も見当たりません。
そんなことを地域の方に相談していたところ、この度、桑の葉を提供していただける方を紹介していただき、学校から15分ほどの所で桑の葉を入手できるように準備していただけました。これで一安心です。
ところで、4月28日付投稿の「桑畑のこと ~桑村の謎~」で周敷(布)郡と桑村郡のことを紹介しましたが、今回お借りしている桑畑はなんと旧桑村郡内にあるのです。そして、その桑畑までの道中に複数の桑の木を確認することができました。さすが桑村です。
近くに国安小学校があり、学校の道路に面したよく目につくところに「紙の里 国安」という看板が掲げられていました。この辺りは周桑手すき和紙の産地で江戸時代の天保年間から手すき和紙が作られているそうです。
和紙の原料として楮(こうぞ)を使用していたようで、なんとこの楮がクワ(桑)科の植物なのです。桑と楮は近縁なのでどちらもよく育つ地域だったのでしょう。
ところで、ところで、6月3日付で投稿した「蚕と桑の不思議な関係①」のなかで、
「色々と試したことはありますが蚕は桑の葉ともう一つの葉しか食べません。
『え!!!!もう一つ食べる葉っぱあるんですか?』その回答はもう少し後にさせていただきます。」
という件がありましたが、その回答を今いたします。そうです。「楮の葉」でした。
桑の葉のように旺盛とはならないものの楮の葉しかなければ、寄っていき噛みついて飲み込みます。
桑と楮の思いもよらなかった関係が明らかになった瞬間です。ならば、桑で立派な和紙がすけるんじゃないのか?
はい!今まさに新たな探究テーマが湧き出てきましたね。
周桑物語

生徒たちは蚕が巨大化したと考えていましたが、よく考察してみると成長が早くなっていることに気づきました。
何も加えず飼育した蚕に比べ0.5%キトサンを添加した方が3日間も蛹になるのが早かったのです。
理由はわかりません。ただ、巨大化したのではなかったのです。
このことはオオクワガタを巨大化する計画は失敗に終わったということを意味していました。
生徒たちは大変残念がりました。しかし、これまでの苦労をなかったことにするのはもったいない。
実際に、30日ほどしかない蚕の幼虫の時期をキトサン添加飼料で飼育することで、3日間短縮するということは紛れもない事実です。
ならば、「この事実の使い道を考えようではないか」ということになったのです。
【蚕で探究 その⑧に続く】
※この物語はノンフィクションです。
周桑物語

出典:https://www.jikkyo.co.jp/sys/wp-content/uploads/2026/02/k307_26.pdf
いよいよ実験が始まりました。約一か月間、コロイド状キトサンを5種類の濃度(0%,0.5%,1.0%,1.5%,2.0%)で添加した人工飼料で蚕を飼育しました。
もちろん毎日も餌遣りや掃除そして残った餌や蚕の質量測定を欠かさず実施しました。
その結果、驚くべき結果を手に入れることができたのです。それは、飼育している段階ではっきりと見てわかるものでした。
コロイド状キトサンを0.5%添加した人工飼料で飼育した蚕が圧倒的に巨大化していたのです。
これは当初の目的である「オオクワガタを巨大化して一攫千金を手に入れる」ということが現実味を帯びた瞬間でした。
もう生徒たちのわくわくは止まりません。
【蚕で探究 その⑦に続く】
※この物語はノンフィクションです。