周桑物語

5令幼虫が現れ始めました。
孵化した日時に差があったので、まだまだ小さな幼虫も混在しています。
4令幼虫が脱皮し終えた瞬間が確認できる写真が撮れたので載せました。

いよいよ幼虫の時期の最終です。
しばらく5令時代が続いて、いよいよ蛹になるための準備が始まります。
蛹の形は皆さんもご存じのとおり皮付きピーナッツのような色と形をしています。
手も足もない動けない時期です。
このような無防備な時期を安全に過ごすために繭(まゆ)という快適居住空間を自ら作り出します。またその頃には案内します。
現在、蚕たちを皆さんに見ていただきたいので、いつでも見られる常設スペースを計画中です。乞うご期待!
周桑物語
イカ軟甲製のコロイド状キトサンの調製を終えた高校生たちは、次に蚕の飼育について調べました。
飼育経験のない彼らは、まず専門家を訪ねることにしました。
愛媛県には、愛媛県農業試験場(現・愛媛県農林水産研究所)が北条市(現・松山市上難波甲)にあり、かつては蚕の研究施設もあり研究員の方がおられました。
また、西日本で唯一、蚕の卵や人工飼料を販売している愛媛蚕種株式会社があります。
このように、飼育に関して相談できる機関があったので、様々な情報を提供していただきました。
特に蚕の餌である桑の葉の供給をどうするかが問題であったのですが、愛媛蚕種㈱では桑の葉の成分をペースト状にした人工飼料が販売されており、それにイカ軟甲製のコロイド状キトサンを混ぜ合わせるだけで蚕が食べてくれるので実験がとてもスムーズに進むと考え、その方法を採用しました。
そして、愛媛県農業試験所の研究員の方に実験のことを相談すると、実験に適した蚕(芙・蓉×つくば・ね)の卵を提供していただきました。
この高校生たちは、偶然にも周りに養蚕の専門家がいてくれたことが、とてもラッキーなことであり、それは実は偶然ではなく必然であることにも後々気づくことになります。
探究には、有識者などからの支援が必要不可欠で、支援が得られるかどうかもテーマ選定の大きな条件であるといっても過言ではありません。
【蚕で探究 その⑥に続く】
※この物語はノンフィクションです。
周桑物語

ということで、高校生たちはキトサンを作るための材料を集めることにしました。
瀬戸内海の燧灘に面する彼らのふるさとでは、当時、カニではワタリガニが、エビではシバエビやシャコエビが豊富に水揚げされ、日常的に食卓にのぼっていました。
まずは各家庭で食べられたものの殻を回収することにしましたが、思うように回収が進みませんでした。
そこで、先生に相談したところ、先生の行きつけのお店に頼んでワタリガニの甲羅やシャコエビの殻、さらにはイカの軟甲(スルメイカなどの透明な羽根のようなもの)を回収して冷凍保存してくれることになりました。
これらの材料は、どんなに綺麗に水洗して乾燥させておいても、日ごとに悪臭を漂わせてくる厄介な特徴があり、彼らの実験室でもしばしば苦情が寄せられるほどの悪臭が問題になっていました。
キトサンの原材料が入手できることだけでなく、お店の業務用冷凍庫で保管していただけることも、彼らにとってはありがたいことでした。
このように地域の皆様の協力があり、十分な量の各種原材料を準備することができたのです。
そしていよいよキトサンの調製実験を実施しました。いろいろな材料でキトサンを調製しましたが、方法は以下のような同じ方法で実施しました。
細かく切断した各種原材料に含まれる炭酸カルシウムを除去するために2N塩酸に48時間漬け込んだ後、タンパク質を除去するために1N水酸化ナトリウムで36時間煮つめました。また、必要に応じて色素を除去するために次亜塩素酸ナトリウムに漬け込むこともありました。それを乾燥させたものをキチンとしました。
このキチンをフラスコに入れて、還流管を取付け40%水酸化ナトリウム中で115℃で6時間煮つめ、それをよく水洗いし乾燥させるとキトサンの完成です。
実際に実験に使用するキトサンは、希酢酸に溶かしたキトサン溶液を水酸化ナトリウムで中和することでできるコロイド状のキトサンを使用しました。
この実験方法は『キチン・キトサン実験マニュアル』:技報堂出版1~17ページを参考にしました。
この実験では、この時に使用した「イカ軟甲」「ワタリガニ甲羅」「シャコエビ殻」の成分組成(どんなものがどのくらい含まれているか)がわかりました(図1,2,3)。
この結果を見て、圧倒的にイカ軟甲がキチンを多く含んでいることがわかり、今後の実験にはイカ軟甲製のコロイド状キトサンを使用することに決められました。
【蚕で探究 その⑤に続く】
※この物語はノンフィクションです。
周桑物語

自分たちで入手可能で費用もかからず、海や山で採れる天然物質か、ごみとして廃棄されるものなかで成長を促す物質を探すことにした高校生たちは、その候補選びを始めました。
まずは人間の体によさそうな健康食品の中から検索しました。
「コラーゲン」「セサミン」「黒酢ニンニク」「すっぽん黒酢」「グルコサミン」「青汁」「プロテイン」等など世の中には多くの健康食品であふれていました。
その中で目に留まったのが「グルコサミン」のパッケージに描かれたカニの絵でした。
調べてみると、「グルコサミン」は、カニの身の成分ではなく殻の成分ということであったので、これなら海で入手できるし、ごみとして廃棄される殻から抽出できるのではないかと考え、グルコサミンについて精査することにしました。
後日、なぜカニの絵が目に留まったのかを聞いてみると、「カニを食べるのが好きだったから」ということでした。
グルコサミンとは、甲殻類全般の殻やキノコを含む菌類に豊富に含まれるキチンという物質がグルコサミンの原材料で、キチンをアルカリ性で煮込むとキトサンという多糖類となり、それを分解するとグルコサミンになるということでした。
そして、キトサンなら学校で調製できることがわかり、とりあえずキトサンを作って実験しようということになりました。
【蚕で探究 その④に続く】
※この物語はノンフィクションです。
周桑物語

蚕で実験することに決めた高校生たちが次に検討したことは「何を食べさせるか」です。
蚕を巨大化することができれば、オオクワガタも巨大化することができるはず。そう考えて、巨大化物質を検索し始めました。
最初に上がった候補は、理科の時間に習った「成長ホルモン」です。高濃度で与えると大きくなるのではないかという考えからです。
それがいい!ということで入手のために薬局に問い合わせました。すると、「0.1 gで3万円です」・・・。
1匹の蚕が一生に食べる餌の量は100 gなので、この成長ホルモン1%を餌に添加するとしても1gが必要なので、1匹に30万円かかってしまうという事実が判明したのです。
これでは一攫千金どころか破産宣告となってしまうではないか!
そこで彼らは自分たちの手で入手可能で費用もかからない、海や山で採れる天然物質か、ごみとして廃棄されるものなかで成長を促す物質を探すことにしたのです。
【蚕で探究 その③に続く】
※この物語はノンフィクションです。