蚕で探究 その⑧
周桑物語

30日ほどしかない蚕の幼虫の時期を3日間短縮する事実の使い道を考えることになった生徒たちは、それから間もなく、偶然にも活用方法に巡り合うことになりました。
ある時、先生が新聞記事を持ってきてくれていました。
その記事には「バイオ新産業 カイコが働く」という見出とともに、蚕を工場のように使用して、動物用のインターフェロンという薬を製造しているという内容の記事が掲載されたものでした。
東レ株式会社愛媛工場に就職された先輩が配属されている動物薬室での業務内容を特集したものでした。
バキュロウィルスというインターフェロンを生産する遺伝子を持たせたウィルスを蚕に感染させることで、蚕の体内でインターフェロンを生産し、動物の薬剤を製造しているということでした。
ただ、バキュロウィルスを感染させた蚕は、生育が遅くなり、死亡率が上がるという課題があるとのことでした。
その時に高校生たちは「バキュロウィルス感染蚕の餌に0.5%コロイド状キトサンを添加した人工飼料にして生育させれば、生育を促進するだけでなく、死亡率も低下させることができるではないか」ということに気付いたのでした。
もしこの事例に応用できれば、インターフェロンのような高価な薬剤の量産を可能にすることで価格を抑え、病に苦しむ動物たちの痛みを癒し、命を守ることに自分たちの実験結果が少しでも役に立つ可能性があることを悟った高校生たちは、さらにこの研究を多くの人々に知ってもらいたいという気持ちが強くなっていったのです。
「オオクワガタを大きくできれば一攫千金も夢ではない!」という高校生たちの当時の思いは、「カイコで産業に貢献する」という思いへと成長したのでした。
【蚕で探究 その⑨に続く】
※この物語はノンフィクションです。