周桑物語
「蚕で探究Ⅰ」では、愛媛県内の高校生が取り組んだ蚕を用いた科学研究について10回に分けて紹介しました。
今日から始める「蚕で探究Ⅱ」では、桑と蚕に関連した素材によるものづくりを通して、地球環境問題解決の糸口を得た、愛媛県内の高校生たちが経験した様々な事例を、実際にその当時の高校生が書き残した日記をもとにしてまとめた文章と写真で紹介していきたいと思います。
では本編に移ります。

その①「こんなに大変だとは思わなかった。」
とある高校に入学したばかりの彼は、洗った桑の葉を拭きながら「こんなに大変だとは思わなかった。」と感じていました。
彼は、環境を探究する部活動に入部していました。地球環境に興味を持っていて、環境保全に関する専門知識を得たいと考えていたからです。
それにもかかわらず、部の顧問から、「1学期は蚕を飼育しなさい。」と告げられ、蚕を飼育することになったのです。
彼がイメージしていた活動とはまったく違うものでした。
部員は彼一人です。蚕の卵を渡されてからの一か月と半月は、毎日蚕の世話をしました。
2000頭余りを飼育すると、蚕が成長するにつれて桑の葉が大量に必要となり、顧問の先生がお借りしている桑園で桑の葉に採取に毎日出掛けました。
桑園といっても今から45年ほど前まで養蚕業を営んでいた農家の方にお借りしているもので、いまやジャングルのように荒廃した状態です。
そこで数10kgもの桑の葉を採取して、学校で水洗いし、水分を拭きとってから蚕に与えました。
大量にあった桑の葉もあっという間に蚕は食べてしまい、糞だけを残すので、毎日餌やりと糞の掃除をしなければなりませんでした。
そのうち蚕は繭を作り、羽化して交尾し卵を産みつけ命を全うしたのでした。蚕の飼育そのものは新鮮で神秘的な経験でしたが、疑問に思わなかったわけではありません。
「なぜこの部活動で蚕なのか?」
何度か先生に聞いてみたのですが、「そのうち分かる」というだけでした。
蚕で探究 Ⅱその②に続く